一瞬の出会い、永遠の「ありがとう」

その年の帰省からの帰路、新宿のバスタ新宿でのことでした。中にいた初老の女性が、迷いながら白い杖を手に右往左往しているのが目に入りました。彼女の立ち位置、その杖、そして周囲を困惑して見渡す姿から、私は彼女が何かしらの助けを必要としていることを直感しました。迷うことなく、私は彼女のそばへと歩み寄り、腕を軽く取ってエレベーターへと導きました。言葉は交わさなくても、その動きが彼女に安心を与えたことを感じ取れました。

JRの乗り換えホームまで、私たちは一緒に歩きました。私の行く先は全く反対方向でしたが、彼女に余計な心配をかけさせないよう、「同じ方向なので大丈夫です」と伝えました。ホームに着くと、電車との間には約20cmの隙間がありました。彼女がその隙間に足を取られでもしたら…という危険を考え、私は彼女と共に電車に乗り込むことを決意しました。席に着くと、電車の出発までまだ数分あることを知り、私は「少し待ち合わせに時間があるので、もう少し駅で時間をつぶします」と言って、別れを告げる準備をしました。

その瞬間でした。彼女が私の手を握り、「ありがとう」と言ったのです。その言葉にはただの感謝以上の、深い絆を感じさせる力がありました。「またきっと会いましょう」という彼女の言葉に、私たちが長い間の知人であったかのような親しみと、別れを惜しむ温かな感情が込み上げてきました。この短い時間の交流が、私たちの心に深い印象を残しました。

この出会いから、私は「ありがとう」という言葉の持つ無限の可能性と、感謝のエネルギーが人の心にどれほど大きな影響を与えることができるのかを深く実感しました。この言葉は、見ず知らずの二人の間にも、温かくて壊れない絆を築くことができるのです。それは、単なる礼儀の表現を超えた、人と人とを深く繋げる魔法のような力を持っています。

このエピソードは私の心に生涯忘れることのない貴重な記憶として刻まれ、日々の生活の中で出会う人々への感謝の気持ちを改めて大切にするきっかけとなりました。「ありがとう」という言葉を通じて伝わる心の温もりと、それが生み出す無限の可能性を、私たちは決して忘れてはならないのです。この小さな出来事が証明するように、一言の「ありがとう」が、世界をもっと温かく、もっと優しい場所に変えていく力を秘めているのですから。

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